動物病院の事業承継でよくある失敗・成功パターンを専門家が解説

よくある失敗パターン

動物病院の事業承継やM&Aは、大きなチャンスである一方で、進め方を誤ると思わぬトラブルや現場の混乱を招くリスクも潜んでいます。

ここでは、過去の現場で実際に見られた「よくある失敗パターン」を挙げ、なぜ問題が起こるのか・どこに注意すべきかを整理します。

情報共有不足によるスタッフ・飼い主様の動揺

経営者同士で話がまとまっていても、スタッフや飼い主様に十分な情報が共有されないと、現場に混乱が生まれます。

「突然の院長交代」「知らぬ間にオーナーが変わっていた」という事態が発生すると、スタッフが大量離職したり、飼い主様の信頼が損なわれたりするケースが後を絶ちません。

契約内容の不備・曖昧さ

M&Aや事業承継の契約書が簡略化されすぎていたり、重要な項目が抜け落ちていたりする場合、後になってトラブルが表面化します。

たとえば、譲渡資産の範囲やスタッフの雇用継続条件、診療報酬の未回収分など、細かい取り決めがなされていないと、承継後に「こんなはずじゃなかった」というすれ違いが起こります。

承継前後の経営方針のすり合わせ不足

前院長と新院長（または新経営者）で、病院運営の理念や方針にズレがあると、承継後に現場の空気が悪化しやすいです。

新しい方針を一方的に押し通したり、逆にスタッフ任せにしたりすると、スタッフの士気や飼い主様対応に影響が出ます。

後継者の準備・教育不足

承継する側の後継者が病院経営やマネジメントを十分に経験していない場合、承継後の運営で悩みやトラブルを抱えがちです。

「現場経験は豊富でも経営は初めて」というケースでは、スタッフ管理や経営判断が後手になりがちです。

税務・法務の見落とし

事業承継時の税金（譲渡所得税・相続税など）や法的手続きの誤り、スケジュール遅延などが、思わぬトラブルやコスト増加につながります。

成功パターンに共通するポイント

病院の事業承継やM&Aで失敗しないためには、**単に条件面を揃えるだけでなく「現場・スタッフ・関係者が納得できるプロセスを丁寧に進めること」**が極めて重要です。ここでは、円滑かつ満足度の高い承継を実現しているケースに共通する成功のポイントを整理してご紹介します。

丁寧な説明と共感を得ること

承継の話が持ち上がった段階から、スタッフや主要な関係者にできる範囲で情報を共有する病院は、承継後も現場が安定しやすいです。

「経営が変わること」「スタッフの雇用や待遇に配慮すること」「飼い主様サービスを維持する方針」など、丁寧に説明することで信頼関係を保てます。

契約内容の明文化と専門家の活用

M&Aや承継契約は、細部まで明文化することが重要です。

仲介会社や弁護士・税理士など専門家のサポートを受けながら、「資産・負債の範囲」「雇用・福利厚生」「承継後のサポート」など抜け漏れなく契約を交わすことで、後のトラブル防止につながります。

価値観・方針のすり合わせと段階的引継ぎ

前院長と新院長（もしくは買い手側）が、病院の経営理念や方針を事前にすり合わせ、引継ぎ期間も十分に設けるケースは、スタッフや飼い主様の安心感につながります。

一定期間は前院長がアドバイザーとして残る、スタッフとの個別面談を繰り返す、といった段階的な移行が成功のカギです。

スタッフ・飼い主様への配慮と誠意ある対応

「スタッフの雇用継続」や「飼い主様サービスの維持」を優先し、安心して働ける・通える環境を整える病院は、承継後もスムーズに運営が続きます。

承継のタイミングで新しいサービスや設備投資など”プラスの変化”を打ち出すのも効果的です。

綿密な事前準備と外部支援の活用

補助金や専門家支援、地域の事業承継センターなど外部リソースを積極的に活用し、資金計画や事務手続きを前倒しで進めることが、円滑な承継・M&Aを実現するコツです。