
動物病院の事業承継(M&A)は、契約書にサインした瞬間に終わるものではありません。
本当の勝負は、承継前の準備段階と引き継ぎ直後の運営フェーズにあります。
現場では、契約書の曖昧さから生じる設備トラブル、スタッフの不安による退職、
カルテやデータの引継ぎ漏れ、顧客離れ――こうした”小さな見落とし”が
承継後の経営を大きく揺らすケースが少なくありません。
この記事では、売り手側が事前に押さえておくべき3つのポイントと、買収側が承継直後につまずきやすい3つのリスクと回避策をまとめました。
「承継後にこんなはずじゃなかった…」を防ぎたい院長や経営者の方へ。 トラブルを未然に防ぎ、病院を次のステージへ進めるための実務ポイントをまとめています。
事業承継で必ず押さえておきたい6つのポイント
1.売り手側が注意すべき3つのポイント
①情報共有不足・書類の不備による引き継ぎのトラブル
設備・在庫・データ・契約・スタッフ情報など、何が引き継がれ、何が対象外なのかを契約書で定義することが最初のステップになります。
ここが曖昧だと、
- 診療機器の修繕費は誰の負担か
- リース契約の引継ぎ範囲
- 土地建物などの資産はどちらか
- 過去の未払金・データ不備の扱い
といった”境界線の争い”が後から必ず起こります。
ここを明確に定義しておくことで、承継後のトラブル回避へと繋がります。
②事業承継を”プラス”に変えるスタッフと顧客への説明
動物病院は院長だけでなく、看護師や受付スタッフが継続して働けるか、顧客離れは起こらないかで、その病院の価値や承継後の経営が大きく変わります。
そのため、事業承継の事前説明は単なる”お知らせ”ではなく、スタッフと顧客の不安を取り除き、安心して新体制へ移行してもらうための重要なプロセスになります。
実際、院長が事業承継を決める理由の多くは、「事業を存続させるため」の前向きな判断であることが主です。
こうした前向きな理由をきちんと伝えれば、スタッフも飼い主様も安心して新体制を受け入れやすくなります。
実際の事業承継の例では
- 承継後の設備投資による診療クオリティの向上
- 人員体制の強化による診療の安定化
- 院長の想いを受け継いだ病院の存続
など、事業承継にはその動物病院として「プラス」になることが多くあり、これらのような、”これからも良くなる未来“を示すことが、スタッフ継続や顧客維持の強力な材料となります。
事業承継=病院が次のステージへ進むためのステップであることを、丁寧にわかりやすく説明することが、承継成功の鍵です。
2.買収側がつまずきやすい3つのリスクと回避策
① スタッフの退職リスク
院長だけのバトンタッチと思われがちですが、実際は看護師や受付スタッフがどれだけ残るかが、病院の質や顧客満足度を大きく左右します。
突然の経営者交代や条件の変更により、スタッフが辞めたりモチベーションが下がったりすると、既存顧客の信頼まで揺らいでしまうことも。
回避策:事前の面談や雇用条件の明示、経営理念の共有を徹底する。
「新体制でも雇用・待遇は守る」「方針はこうなる」と丁寧に伝えることで、安心感を与えましょう。
② 財務・法務の”見えない地雷”
数字だけでは見抜けないリスク――たとえば、未払金や訴訟案件、賃貸契約や設備リースの条件、カルテ保存の不備などが後から判明し、「想定外の出費」や法的トラブルに発展することもあります。
特にカルテやレントゲンデータの引継ぎは、医療機関として非常に重要な業務ですが、ここが抜け落ちている契約書も少なくありません。
回避策:デューデリジェンスを実施し、契約書作成は専門家を活用する。
契約書作成は専門家を活用し、細部まで明記しましょう。
③ 顧客離れ・信頼低下
“あの先生じゃないなら行かない”――動物病院ならではの悩みです。新しい院長や体制に変わっただけで、長年通っていた飼い主様が離れるケースがよく見られます。
また、ネットの口コミやSNSの評価も急に変わることがあり、経営初期に大きなダメージとなることも。
回避策:移行時には広報やご挨拶を積極的に行い、方針説明やイベントで新しい体制への信頼を築く。
患者や飼い主様からのフィードバックを集めて、診療やサービス内容の見直しに生かすことも重要です。
まとめ|動物病院の「承継後3ヶ月」を乗り切るポイント
動物病院の事業承継(M&A)は、契約書にサインした瞬間がゴールではなく、本当の勝負は”承継後の最初の数ヶ月”です。法規制・設備の落とし穴、スタッフの引継ぎ、財務・法務リスク、顧客離れ――どれも「自分は大丈夫」と思っていると意外な形で問題化します。
重要なのは、”事前の情報収集・現場調査・専門家への相談”を惜しまないこと。
High Adoptionでは、こうした現場リスクやトラブル回避のノウハウまで含めて、動物病院専門の事業承継(M&A)仲介サポートを提供しています。
経験豊富な専門チームが、初めてのご相談から成約後のフォローまでしっかりサポート。
承継後に「こんなはずじゃなかった…」とならないよう、ぜひ早めの準備とご相談をおすすめします。