事業承継(M&A)が進む動物病院業界
ここ数年、動物病院業界では「企業化」や「事業承継(M&A)」が大きなトレンドとなっています。
2020年代に入ってからは、外資系ファンドや大手資本の参入が相次ぎ、全国の動物病院のうち約15％が何らかの企業グループに属する時代になりました（2024年、CINC Capitalなど業界レポートより）。
背景には、経営者の高齢化や後継者難、医療機器の高度化による設備投資負担、そして「動物病院事業承継(M&A)」をきっかけとした事業集約の流れがあります。
これまで地域に根ざした個人院が主流だった動物病院業界も、今や企業病院・グループ病院が都市部・地方を問わず増加しつつあり、病院の選択肢や経営スタイルも大きく変わり始めています。
企業グループ化がもたらす変化と強み―動物病院の新しいカタチ
企業グループによる動物病院経営は、組織的なマネジメントと設備投資の強みが際立ちます。
最新のCTやMRIといった高額機器もグループ全体で導入しやすく、スタッフの労働環境や福利厚生、給与体系も安定しやすい傾向にあります。
シフト制や有給休暇など「働き方改革」も企業経営のほうが進んでおり、若手獣医師の応募が増える要因にもなっています。また、診療マニュアルやサービス基準が統一されているため、どの病院でも一定水準の診療が受けられる「均質化」は飼い主様から見ても安心材料です。
その一方で、現場の課題として「決まったルールが多く、院長や獣医師が自分の裁量でサービスを変えにくい」「雇われ院長・勤務医が“サラリーマン化”しやすい」といった指摘もあります。
特に、事業承継(M&A)で急に企業化した院では、スタッフの戸惑いやモチベーション低下が起きる場合もあり、「現場力」と「経営効率」のバランスが問われています。
個人院長が守る「現場力」――地域密着型動物病院の価値とは
個人経営の動物病院は、何よりも院長やスタッフの裁量の大きさと地域密着性が最大の強みです。
「顔の見える診療」や、飼い主様との深いコミュニケーションを通じて、一頭ごとに合わせた“オーダーメイド医療”を実践できるのは、個人院個人院ならでは。
飼い主様との長年の信頼関係や口コミネットワークも、都市部・地方を問わず個人院の競争力の源泉です。
また、フットワークの軽さを活かして「新しいサービスや予防医療」「独自のイベント」「地域連携」などをスピーディーに実現できる点も、企業病院にはない魅力といえるでしょう。
一方で、後継者や経営リソースの問題から、事業承継(M&A)を選択する個人院長も増えています。自分のカラーを残しつつ、次世代やグループ経営にバトンを渡す決断も、今や珍しいことではありません。
個人動物病院が直面する課題―働き方改革と後継者不足のリアル
個人病院の最大の課題は、働き方改革やスタッフ定着の難しさです。長時間労働や急な呼び出し、休暇取得のしにくさが“ブラック体質”として問題視され、若手獣医師の新規開業も年々減少傾向。
また、経営規模が小さい分、最新医療機器への投資やデジタル化対応が難しいこと、ペット医療法規の強化（診療情報の保存、X線漏洩検査義務など）にも迅速に対応しなければなりません。
そして何より、後継者不足が深刻化しています。院長の高齢化と勤務医志向の増加により、「病院をたたむしかない」院長が全国で増加し、その結果、第三者承継やM&Aによる“病院の存続”が新たな解決策として注目されています。
動物病院業界の未来は“二極化”か“ハイブリッド化”か？
この先、動物病院業界は「企業病院」と「個人経営院」の二極化がさらに進みつつ、一方で両者のハイブリッド化も進むと予想されます。
たとえば、グループ院に所属しながらも“院長裁量”を残すモデルや、企業経営でも地域密着型サービスを強化するパターンなど、「画一的な病院」から「特色ある選択肢」への進化が始まっています。
また、動物病院事業承継(M&A)の市場も活発化し、“継ぎたい人”と“渡したい人”のマッチングや、補助金・専門家サポートの利用が一般化しています。
ペット医療市場全体では、高齢ペットや多頭飼育、生活スタイルの多様化に合わせて、より柔軟で個性ある医療サービスが求められる時代です。
飼い主様自身も「自分に合う病院」「納得できる医療」を選ぶ時代になりつつあります。
自分に合った動物病院経営と選択肢――いま考えたい「事業承継(M&A)」の可能性
今の動物病院業界は「企業経営が良い／個人経営が良い」という単純な時代ではありません。
大切なのは、院長自身やスタッフ、ペット・飼い主様にとって
何が一番幸せな選択かを考え抜くこと―
そのうえで、「病院を守るための事業承継(M&A)」「地域密着を磨く個人経営」「働きやすさや成長を求める企業グループ参加」など、さまざまな選択肢をしっかり見極めていくことが必要です。
動物病院の“これから”を考える院長や経営者の皆さまには、今の選択が未来のスタッフや飼い主様、そして地域の動物たちの幸せにつながる―
その視点を持って、じっくりと病院の“次のステージ”を描いてみてください。
High Adoptionでは、動物病院の事業承継(M&A)や病院経営のご相談を随時受け付けています。どんな小さな悩みも、お気軽にご相談ください。
