近年、動物病院業界では第三者承継(M&A)による売却や買収の事例が急増しています。後継者不足や経営者の高齢化が進むなか、今や「売り手」側も買い手から選ばれる時代。

では、実際にどんな動物病院が買い手から評価され、成約につながっているのでしょうか?

本記事では、2025年現在の業界動向・現場の声・最新の成功/失敗例をもとに、「選ばれる院」の条件を買い手目線で詳しく解説します。

経営データがしっかり整理されている

買い手はまず、「この病院を買って“黒字が続くか”」を最重視します。

売上・利益・患者数の推移が3年〜5年単位で分かりやすく整理されている病院は、
「帳簿を見てすぐに健全経営と分かる」ことで、買い手に安心感を与えます。

逆に、帳簿や資産状況が曖昧な病院は、いくら人気でも買い手がつきにくい傾向です。

スタッフが定着し、雰囲気が良い

買い手は「買った後にスタッフがごっそり辞めるリスク」を極端に嫌います。

実際のM&A成約案件でも「勤続5年以上のスタッフが複数名在籍」「院長と現場スタッフのコミュニケーションが良好」な病院は高評価。

スタッフの離職率や雇用契約の有無、院内の雰囲気まで、必ず買い手が下見・面談時にチェックします。

地域や患者からの評判が高い

地域の口コミやWEB評価、新患・リピーター数、紹介患者の多さも選ばれるポイント。

買い手が下調べで「Googleマップの評価が高い」「近隣からの紹介実績が多い」院は、買収後の患者離れリスクが低いと評価されやすいです。

設備・IT・法令対応が“今どき”である

「電子カルテ導入済み」「予約システム完備」「医療機器が一定水準」など、即修繕や大規模投資が不要な病院は買い手から人気。

逆に「X線漏洩検査の未実施」「カルテ保存が雑」など法令順守が弱い病院は敬遠されます。

ノウハウやブランド・HPなども引き継げる

買い手は「現院長だけの病院」ではなく、HP・SNS・口コミ・マニュアル・スタッフ教育ノウハウまで“仕組み”として引き継げる病院を好みます。

顧客リストやブランド資産が整理されていれば、買い手の経営リスクも減ります。

【実例1】経営データ・財務が明瞭、見せられる病院は信頼される

2024年、兵庫・宮城・茨城の3つの動物病院グループがM&Aで統合され、Japan Animal Care Holdingsが誕生しました。M&Aアドバイザーのオンデックによると、買い手側（統合側）が3社を選定した最大の理由は、毎年の財務データ・経営数字・スタッフ構成が即座に提示でき、「実績ベースで将来利益を予測できる透明性」があったからです。業界で一般的な「院長の経営手腕に依存する」という属人的な運営ではなく、組織的な診療体制と経営基盤が確立されていたという信頼感が、適正な評価と統合の実現につながりました。

参照元: 国内最大級の動物病院グループが誕生──M&Aが拓いた持続可能な仕組みとは | Forbes JAPAN 公式サイト

【実例2】スタッフ定着率が高い院は、買い手が安心できる

実際に買い手となった企業担当者によると、「勤続10年以上のスタッフが複数名在籍、離職率も低く、院長と現場の関係が良好な病院は“チームごと引き継げる安心感”がある」とのこと。

逆に、「院長のワンマン色が強い、スタッフが頻繁に入れ替わる病院はリスクが高い」と判断されるケースが多いそうです。

【実例3】地域の口コミ・患者基盤が安定している

ある地方都市の承継案件では、院長一人の力量よりも「患者数が安定」「WEBのレビュー評価が高い」「地域獣医師会とのネットワークが強い」ことが決め手となり、同規模の他院より好条件で成約しました。

【実例4】設備やIT導入が進んでいる

買い手の多くは「すぐに大規模修繕や高額投資が不要な院」「電子カルテや予約システム導入済み」といった“成長余地”や“効率性”も重視しています。

老朽化した設備、アナログ管理の病院は買い手候補が絞られ、価格交渉でも不利になりやすいです。

【実例5】法令順守とリスク開示が徹底

最近はカルテ保存やX線漏洩検査、従業員雇用契約など法務・コンプライアンス面も問われます。

「後からリスクが見つかる」「未払金やトラブル隠しがある」院は、買い手が途中で手を引く最大の理由になっています。